睡眠を妨げる食べ物と睡眠を妨げない食べ物
ベットに入ってもなかなか寝付けない「入眠障害」の対策。アトピーの痒みと闘いながら、いかに早く良い眠りにつくか…です。
昨年末、「睡眠時間が減少すると、比例してアトピーが悪くなる…」というコラムを書きました。お読みくださった方から、「もっと詳しく続きを…」「早速実行します」など、たくさん反響をいただきました。今回は「睡眠その2」です。
眠りを妨げるのは「消化に時間がかかる食べ物」
なかなか寝付けない。夜中に目が覚めてしまう。このような時は、夕食が関係しているかもしれません。「てんぷら・フライ・から揚げ・ステーキ・焼き肉・ハンバーグ」などは、油脂が多く消化時間が長いので胃の中に停留する時間が4〜5時間かかります。果物は約1時間、ご飯やパンは2〜3時間、焼魚3時間程です。
消化の悪い夕食ですと、胃の中に食べ物が残り、胃の消化活動が活発になるた め体温が下がりません。基本的に夜、ヒトが眠くなるのは、「体温が下がるタイミング」なのです。ちなみに、昼間に眠くなるのは、昼食に小麦を主とする食事 をたくさん食べた時と言われています。赤ちゃんが眠くなると手足が暖かくなるのは、みずから眠りに入るために手足から熱を逃がして体温調節しているからな のです。
深部体温を0.5度下げることが、 すみやかな入眠とその後の良質の眠りの条件とされていますので、入浴後に冷たい水を100mlほど飲んで、深部体温を下げベットに入るのもいいかもしれま せん。私がカウンセリングしているアトピーの子どもを持つお母さんたちから「消化の良い夕食を早めにとり、寝る前にゆっくり入浴し、少しだけ冷たい水(ミ ルク)を飲ませると夜中に起きないで朝まで寝てくれました」という声を多数いただきます。
大人は、大きな悩みでなくても、「明日の仕事の段取り」とか「楽しいことで あっても気になること」などたくさんありますね。ベットに入っても「頭の中のひとりごと」が押しよせてきます。あれこれ考えて脳が働いてしまいます。それがストレスになり交感神経が副交感神経にバトンタッチされず、眠りにつけないということがあります。子どもほどスムーズにはいきませんが、消化の良い夕食 のあと、就寝時間が近づいたら、パソコン・携帯から離れ、部屋の照明を落とし、ゆっくり入浴し、これから眠るのだという自分の入眠儀式を作っていくことが 大切です。
平日も休日も同じ時間に同じことをすることにより、身体が覚えます。睡眠時間が近づいたら眠気のリズムを逃さないようにしましょう。
〈消化のよい食品〉
- 脂肪の少ない肉類 : 牛豚ヒレ・とり胸・ささみ・牛豚鶏レバー
- 脂肪の少ないおもに白身魚 : タイ・カレイ・ヒラメ・サケ・タラ
- 半熟茹で卵 : 半熟1.25時間(生卵2.5時間・固茹で卵3時間・卵焼き3.15時間)
- 乳製品 : ヨーグルト・チーズ・牛乳
- 豆類 : 豆腐・納豆・柔らかく煮た豆・きなこ
- 野菜いも類 : 柔らかく煮たり茹でた人参・大根・キャベツ・白菜・かぼちゃ・カブ
- 果物 : バナナ・りんご
- 穀類 : おかゆ・柔らかい白飯・うどん・マカロニ・白いパンのトースト
〈消化の良い料理〉
クリームシチュー・ロールキャベツ・蒸し鶏・つくね鍋・湯豆腐・煮魚・おろし煮・味噌煮・蒸し魚・あんかけ・刺身・茶碗蒸し・卵豆腐・温泉卵・かき玉スープ・グラタン・冷や奴・豆腐あんかけ・温野菜など。
〈消化の悪い食品〉
- 脂肪の多い肉類 : 牛豚ロース・牛豚バラ・ベーコン・ソーセージ・鳥皮
- 脂肪の多い魚 : イワシ・サバ・サンマ・マグロのトロ・ウナギ・イカ・タコ・貝類・海藻類
- 豆類 : 大豆・枝豆
- 野菜いも類 : 繊維質の多いもの ごぼう・たけのこ・セロリ
- 果物 : パイナップル・ドライフルーツ・グレープフルーツ
- 穀物 : 玄米ご飯・赤飯・おこわ・胚芽入りパン
- 油脂類 : ラード・ヘッド
トリプトファンはセロトニンの原料です。
セロトニンが増えると睡眠ホルモンメラトニンが分泌されます。
トリプトファンとは、必須アミノ酸のひとつで、食事から栄養分として摂取しな ければならない成分です。牛乳から発見され、乳製品や大豆製品、ナッツ類などのタンパク質に含まれています。精神を安定させ、鎮痛作用を持つ神経伝達物質 の原料になり、不眠を解消する効果・美肌効果・集中力、記憶力を高める効果があります。
食物から摂取されたトリプトファンは、肝臓で分解され、脳に運ばれると、ビタミンB6やナイアシン・マグネシウムとともにセロトニンを生成します。このセロトニンが不足すると、睡眠障害やうつ状態、不安感などが引き起こされます。
脳内のトリプトファン濃度が高まるとセロトニンが増え、眠りを誘うホルモン、 メラトニンが分泌されます。トリプトファンを多く含む食材は、牛、豚、鶏の肉やレバー・カツオやイワシ・チーズ・大豆・アーモンドなどです。肉類や魚類の 動物性たんぱく質にたくさん含まれています。
穀物もトリプトファンがたくさん含まれており、トリプトファンは、炭水化物と一緒に摂ると脳内に届きやすくなります。脳内に届かないとセロトニンには変化しません。野菜類や果物類にはほとんど含まれていません。バナナ10mg・りんご1mg・トマト5mg・ニンジン7mg・キャベツ11mgといったところです。
夕食に、トリプトファンを慌てて食べてもメラトニンの分泌までは時間がかかります。朝、昼の食事で、しっかりトリプトファンを摂取してください。
〈可食部100gあたりのトリプトファン量〉
一日のトリプトファンの摂取量目安は、成人(体重60kg)で120mgです。
- 牛レバー : 290mg
- 豚ロース : 280mg
- 鶏むね : 270mg
- カツオ : 310mg
- うるめイワシ : 260mg
- ぶり : 250mg
- ひらめ : 240mg
- パスタ : 150mg
- そば : 120mg
- 白米 : 100mg
- ナチュラルチーズ : 320mg
- ヨーグルト : 50mg
- 牛乳 : 40mg
- 豆乳 : 55mg
- 納豆 : 240mg
- アーモンド : 200mg
- くるみ : 200mg