ミツバチの巣を構成するミツロウが主原料の保湿クリーム『ビーズワックス』ができるまで
アトピーラボのスキンケア製品で、『ビーズワックス』というものがあります。
とても人気があり、多くの方が長年お使い下さっています。
ビーズワックス誕生の経緯
『ビーズワックス』を作ったきっかけは、今から24年も前になりますが、私の次男のアトピーが酷く毎日お風呂から上がった後にステロイドを塗り、その上にグアイアズレンという消炎剤が入ったブルーのワセリンを保湿で使っていました。
ある日、次男の肌が赤く腫れ盛り上がったようにただれているのに気がつきました。ワセリンだけを塗ったところはなんともないのに、痒くて掻き傷がありステロイドを塗ったところだけが赤くなっているのです。
私は「痒みによる掻き壊しの炎症」と思い患部を包帯で保護し、よりいっそう丁寧にステロイドを塗りつづけました。しかし、何日たっても炎症は引かず、いろいろ考えるうちにステロイドの基材にたどりつきました。
ステロイドには、軟膏とクリームがありますが、クリーム基材にかぶれていたのです。
軟膏よりクリームの方が皮膚への浸透が良いので、ステロイドの薬効が良いと思っての事だったのに、母である私が、余計な炎症をつくっていたのです。
ステロイドと交互に使っていたヒルドイドクリームも乳化剤を使っているので、使えなくなりました。
ワセリンが基材の軟膏はかぶれなかったのですが、ステロイドに頼るのがイヤになり食事と保湿剤、洗濯や掃除などの環境整備にいっそう力を入れるようになりました。
ビーズワックスの由来となった薬
その頃、紫雲膏という赤紫のお薬をもらっていたのですが、衣服に付くと赤紫に染まり、洗濯してもベトベトがとれないので、あまり使っていませんでした。
紫雲膏は、中国の明の時代外科の塗り薬潤肌膏(じゅんきこう)に由来するもので、江戸時代、世界で初めて全身麻酔の人体実験をおこなった華岡青洲がつくりました。
余談ですが、青洲先生が全身麻酔に使った薬草は、曼陀羅華(まんだらけ)の実、草烏頭(そううず)を主成分とした6種類ですが、曼陀羅華はチョウセンアサガオ・草烏頭はトリカブトで一般のかたも知っている毒といわれる薬草です。
これらに麻酔効果があることを発見し、母と妻の強い希望で人体実験にふみきるのですが、母の死と妻の失明を代償に麻酔薬は完成しました。青洲先生とそれを 支える母と妻の情熱と深い愛情に頭が下がります。アメリカでは、それから40年も経ってからエーテルを用いた手術に成功しています。
ビーズワックスの成分について
話はもどりますが、次男だけの保湿剤を作るにあたって、紫雲膏の元となった中国の潤肌膏を参考にしようと思いました。 潤肌膏は、ゴマ油・黄蝋(オウロ ウ)・紫根(シコン)・当帰(トウキ)・という4つの原料から構成された軟膏です。紫雲膏は、その潤肌膏に豚脂(ラード)を加えたものです。
豚脂は脂質の酸化がありますので、配合する考えはありませんでした。潤肌膏をできるだけ再現したかったので、当時の原料に近いものを探しました。ゴマ油は圧搾したもの、黄蝋は蜜蝋(ミツロウ)を精製していない未精製のものです。
当帰は朝鮮当帰、紫根は色がつくので、同じ創傷治癒効果のある地黄(ジオウ)にしました。何度も何度も改良を重ねていくなかで、しっかり保湿して極力ベタつかず使いやすいもの、ステロイドの使い過ぎなどで過敏になった肌につかえるものと考え原料も変わりました。
未精製の黄色い黄蝋は、アレルギーを避けるため、残留成分が肌を刺激しないように、白くなるまで精製したものにしました。
ゴマ油は酸化を避けるため、加熱しない低温圧搾のものを使っています。漢方エキスの当帰は血行促進の働きがあるため、アトピー肌では、余計な痒みをおこす可能性を考え、抗炎症作用のある紫蘇(シソ)にしました。紫蘇は、ヒスタミン遊離抑制が期待できます。
創傷治癒効果のある地黄。年齢を問わず、アトピー肌は、色素沈着しやすいので、メラニン生成抑制効果と抗酸化作用のある葛根(カッコン)を配合しています。
湿疹、アトピーにも喜ばれる安心保湿剤ビーズワックス
ステロイドのような即効性の効果はありませんが、スキンケアとしては、ロングセラーで、とても秀逸だと思っています。掻き傷があり、乾燥して白く粉を吹いた皮膚には、お風呂上りに薄くのばして下さい。うるおいのある肌になります。
手首や足首など、掻き壊して傷になっているところは、清潔にしたあと『ビーズワックス』を厚めに塗り、包帯をして密閉します。外気の雑菌を遮断しますので、自身が持っている自然治癒力を助けます。手湿疹で荒れた手には、家事の前後にハンドクリームでお使い下さい。赤ちゃんがなめても心配のいらない安心の製品です。